はりは“針”(裁縫用など)と書き、“鍼”(はり医の鍼)と書くと、業種職人史話にあります。
鍼治療の源は九鍼にあるのですが、現在では三稜鍼 円利鍼 員鍼(円鍼) てい鍼 などですが、最も道具として使用されているのが 毫(ごう)鍼 いわゆる鍼でしょう。
その昔は現在のような地金ではなく、鋼鉄鍼と言われて鉄製でした。手入れが大変だったと考えられます。口伝では、はり医の鍼は江戸時代中ごろには現在のような貴金属の“金 銀”の鍼は武家のような特別な階級の人々の治療に供され、使用されていたようです。一般庶民は、竹の皮のついた部分を細工して使用されていたようです。近年まで、馬の瀉血に笹鍼が使われていました。(はり磨き参考)
金銀の鍼の特徴
江戸中ごろに律令が解除になり、貴金属の鍼が一般に用いられて隆盛を見たのではないかと思われます。
金 銀 銅 の地金には、殺菌作用があると伝えられております。世界初のソ連(ロシア)の宇宙船の飲料水に銀が入っていた(ソ連金属の役割 参照)銅ツボの水は腐らない、と伝えられています。その殺菌作用で水が浄化されるからでしょう。近代医学による銅の衛生学的研究によりますと、微量金属作用(殺菌作用)は金銀銅が強く、科学的に証明できないような少量で驚くほどの作用を表す。と、あります。
金の効用としましては、精神を鎮め 骨髄を硬くし 五臓を利通する とあります。合金のよさ(松下電気貿易)(ドクターシャーライフ)日本の鍼が貴金属を古くから使っていたのもその作業上の良さばかりでは無く、偉大な先人達の経験に基づく安全性からでしょうか。
江戸時代に上流社会の人々の鍼治療に痛くなく、安全で、尚且つ手際良く治療する方法が編み出されたものと考えられます。銀の鍼は銀の持つ 柔らかさ 腰の強さ 滑らかさは現在でも人気がありかなり治療に用いられています。ごく最近でも銀(AG)添加による抗菌ステンレスの全く新しい地金が開発され商品化も進んでいます。これも銀のもつ殺菌作用があるため見直されてきたものと考えられます。
近年は、ステンレス コバルト などの酸化しにくい地金での鍼が作製されています。ステンレス鍼は硬度に何通りかあります。はり医の鍼は穂(鍼)・龍頭(鍼柄)との加工は半田付けでしたが、作業性と美観上、また 蒸気滅菌(オートクレイブ) 乾熱滅菌 ガス滅菌 放射線滅菌 電子線滅菌 などに耐えられるように圧着による加工にし、これが日本の鍼製作の主流になりました。当社の考案もよかったのだと自負いたします。
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